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zoom RSS 音楽業界(2)アーチスト

<<   作成日時 : 2007/02/26 20:16   >>

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前回は、音楽業界人についてざっと説明した。
今回は、実際に音楽で食っていく仕事について説明しよう。

ミュージシャンとして業界で食って行く道は大きく分けると、(1)アーチスト、(2)プレーヤー、(3)ブレーン(この呼び方は私が勝手につけた)の3つである。

これら3つの道は、アマチュアにとっては境界線など無いに等しいが、業界では区別され、仕事内容や立場が異なる。
複数の職種をクロスオーバーして活躍している多才な人もいるが、メインとなる収入源は、どれか1つである場合が多い。
では、それらの職種について説明する。

(1)アーチスト
音楽業界で言うところのアーチストとは、言葉の意味から連想するような一部の音楽性、芸術性の優れたミュージシャンを示している訳ではない。
音楽事務所、レコード会社とアーチスト契約を正式に交わしている、ソロシンガー、シンガーソングライター、ソロプレーヤー、ユニット、バンド、グループのことで、音楽ジャンルやキャリア等は関係ない。
要するに業界の表舞台に立つ商品そのものの総称である。

アーチストの仕事は、CD(自分の分身)を制作することと、ライブやメディア(TV、ラジオ、雑誌等)を通してそれを宣伝、普及させることである。

レコード会社や事務所とのアーチスト契約には様々な形があって、一概に皆同じとは言えないが、大まかな項目は、期間権利報酬についてである。

契約期間は、シングル1枚のみの単発モノ(半年以内)からあるそうだが、通常は3年契約である。
期間の長さは、アーチストに対する期待と、投資予算に比例する。
分かりやすく言えば、3年以内に売れなければもう後は無い、3年以内にいくら売れてもこの約束事は変えない、と言う契約である。

しかし実際は、デビュー初年度に予算の大半を費やしてしまう場合が多く、結果が悪ければ、後半の1年半給料は出るが、ほとんど仕事がない、でも勝手に仕事は出来ない、いわゆる飼い殺し状態になってしまうおそれがある。
故に3年契約と言っても、最初の1年半が勝負なのである。

報酬は、事務所から支払われる給料と、音楽出版社から支払われる印税収入である。

新人アーチストは、芸人と違って、歩合ではなくほとんどが月給制である。
月給は、15〜25万円ぐらいで、更新は1年毎に行なわれ、売れ行き次第で10倍ぐらいまでは増えて行く、もしくは途中から歩合給に切り替わる。
給料をちゃんとくれないような事務所は、金が無いか、売る気が無いか、のどちらかである。

バンドやグループの場合、曲を作っている者とそうでない者、ボーカルやリーダー以外の者、など担当により給料に若干の差があることも多い。
曲作り、宣伝活動、打ち合わせ等は、あまり働いていないメンバーもいる訳で、労働時間にしたらかなりの差があるからだ。

例えば、地方キャンペーンや、撮影の無い取材、ラジオのゲスト出演などの仕事は、ボーカルとリーダー(作曲者)だけで行く事が多い。
少人数で動いた方が経費がかからず、小回りも利くからである。
そして、この業界は、一般業種に比べて接待費を多く経費計上出来る為、打ち合わせを兼ねた食事会や飲み会がやたらと多い。
当然、そこに呼び出されるのもメンバー全員とは限らない。

アーチストの報酬は、業界から発生したギャラではなく、そのほとんどが一般人相手にモノを売ったり、ライブをしたりして業界が得た収益の中から支払われるシステムである。
結局の所、アーチストの収入を左右するのはファンの数である。

アーチストは、一種のキャラクター商売なので、音楽だけではなく、人間そのものが全て商品として扱われる。

業界側は肖像権と称し、写ることから始まり、書くこと、話すこと、ファッション、持ち物、生活態度、異性関係に至るまで、小うるさい姑のように細かく干渉してくる。
何故ならそれら全てが商売につながり、売上に影響するからである。
しかし、アーチストが皆同じ干渉をされる訳ではない。
商品が、より売れるようなイメージに沿った方向で干渉してくるだけだ。

アーチスト契約は、あくまでもパトロンである業界側からアーチストに提示してくる約束事なので、内容は全て業界側に都合の良いように出来ている。
アーチストは、タダで世に出してもらう代わりに、売れるまではそれらの条件を全て呑んで、業界に身を委ね、やるべき事を一生懸命頑張るしかない。
ビッグになった暁には、全ての立場が逆転するのだから。

あと、ライブやCD、アーチスト写真等、表向きはバンドメンバーとして売られていても、事務所やレコード会社とメンバー契約を交わしていない者がバンド内にいる場合もある。

個人契約と言って、彼等は月給制ではなく、仕事1本につきいくら?のギャラ制でバンドに参加していて(次回説明するプレーヤーの扱い)、演奏以外の仕事には来ない。
仕事がない時は、他の音楽の仕事をする自由が認められている代わりに、バンドが売れても印税は入って来ない。
演奏の腕はあるが、作詞作曲にあまり関与しないプレーヤー指向の強いミュージシャンがバンドデビューする場合、出来れば契約は個人契約にした方が結果的には有利である。

印税は、売れなかったら小遣い程度しか入ってこないが、万が一売れた場合には、何億円も入って来る。
これこそ、アーチストが一攫千金と言われる所以であり、メディアや芸能界に依存せずとも食って行ける一番の強味である。

発生する印税で飛び抜けて額が大きいのは原盤印税だが、それはCD制作費を出資したレコード会社や事務所の取り分になる。
アーチストに支払われる印税は、歌唱演奏印税、作詞、作曲印税である。

歌唱、演奏印税は、ソロアーチストの場合本人に、グループの場合は各演奏者均等に分配される。
作詞、作曲印税は、作者個人に直接支払われるシステムになっている。
CDの歌詞カードや、楽譜、カラオケ、歌番組等、楽曲を扱う全てのモノは、作者が誰であるかを明記する義務がある。
故にその曲の印税が誰に入っているか?一目瞭然である。
売れてるバンドやグループの場合は、同じメンバーでも年収が10倍以上違うのである。

アーチストの長所は、最も趣味に近い音楽の仕事だということだ。
本質的にはお金の為ではなく、自分の好きな音楽を作って広める為に働く。
ただそこに期限とスポンサーのダメ出し、スタッフの期待やプレッシャーが加わって、多少の自由が奪われるだけである。
どれぐらい自由が奪われたか?は主観の問題で、それはほとんどの場合、アーチストの実力や才能、プロデューサーとの相性、そして何よりも売れ行きにかかっているとだけ言っておこう。

自ら営業して仕事を取って来るような事は一切無いから、名刺を作る必要も無ければ、営業的な付き合いをする必要も無い。
仕事現場には必ずマネージャーとローディーがいて、面倒な雑用は全てやってくれる。
タレントや芸人みたいに、先輩後輩の上下関係等もほとんどない。

更に業界のアーチストに対する必要経費は幅広く、楽器機材費、音楽研究の為の資料(聴きたいCDやコンサートのチケット)から衣装代、美容代まで出してくれる。
当然、仕事中の食費など一切かからない、至れり尽くせりである。
こんな楽勝な仕事で、売れて富も名声も手に入った日には人生バラ色、もう言う事なしである。

アーチストの短所は、最もリスクが高い音楽の仕事だということだ。
前述したように、新人アーチストに与えられた時間はせいぜい2年である。
その短い期間の間に結果を出さなければ、生命が絶たれるのである。
結果を出すと言っても、CDは先に完成している訳で、ライブもそんなに頻繁にある訳じゃない。

運良く大きなタイアップ等、チャンスの大きい仕事に恵まれれば全国展開する道も開けて来るが、その確率は極めて低い。
現実は、誰もがやってる小さな宣伝仕事を1つ1つこなしていくだけである。
短期間で大ヒットを飛ばす為には、必ず何らかの突破口が必要である。
しかし、その突破口がアーチストにとっては、スタッフが取ってくる仕事=ほとんど運任せなのである。

70年代のフォーク系アーチストのように、地道に全国のライブハウス回りをチンタラやっていたら、売れるまでに10年かかってしまう。
実際、10年もやり続けていたら、運も回って来て、誰でも1曲ぐらいは当るのである、それがギャンブルの法則と言うものだ。

しかし、アーチストが急増した80年代以降の業界は、短期戦、数打ちゃー当る戦略が主流で、元々そう言うアーチスト契約なのである。
故に、成功したアーチスト=デビュー2年以内にブレイクしたアーチストと言うことになる。

大ヒットのチャンスが回って来るまで、寿命を延ばす(契約更新し続ける)為には、最低でもCD1万枚以上は売れる人気と、貧乏でもその道一本で腐らずに頑張り続ける根性が必要で、バンドやグループの場合、更に強い結束力が要求される。

レコード会社や事務所をクビになると言う事は、業界ではもう商品としての価値が無くなったことを意味する。
バンドやグループの場合は、1度失敗してもメンバーやグループ名を変え、違う商品として再チャレンジする事は可能だが、ソロアーチストの場合は、ほぼ致命的である。

私は、2つのバンドでアーチストを経験した。
1つ目のバンドは、まだ皆若かったせいもあり、デビューして2年足らずで人間関係が崩壊してしまった。
理由は、皆が思ったように売れなかったから、不満が爆発して内部分裂したのである。

2つ目のバンドは、10年は続けようと思って、印税も全て分け合う条件で、個人事務所でやり始めたのだが、デビューして3年で事務所が倒産した。
理由は、資金が底をついてしまったからである。
皆もう大人だったから、喧嘩別れするほど尖ってはいなかったが、給料も出ないようなバンドに賭ける程の団結力はなく、各々が食って行くことで精一杯になってしまったのである。

表向きは音楽性の違いとか言って、バンドやグループが解散するが、解散する本当の理由は2つしかない。
売れなくて人間関係が壊れたか、売れて人間関係が壊れたか、のどちらかである。

アーチストとしてのキャリアやステータスは、どれぐらい売れたか?、売れ続けたか?に尽きる。
長い年月に渡って業界に功績を残し、世の人々の心に深く浸透したアーチストだけが殿堂入りを果せるのである。

ほとんどを業界の力に依存しなければ音楽が成立しないソロシンガーは別として、元々自給自足で音楽を創造、表現出来るミュージシャンにとって、アーチストとは、一般大衆を相手にした文字通り、ポップアート(人気芸術商売)と言える。


先日、ローカルTVの、深夜の歌謡番組に出ていた無名の演歌歌手達を見て、ふと疑問に思ったことがあった。
彼(彼女)等は皆口を揃えたように、自己紹介する時に必ず”○○○レコードの○○です”と、まるでレコード会社の広告塔みたいな言い方をする。
ポップスやロックアーチストの場合、いくら新人、無名と言っても自己紹介で、レコード会社の名前を前面に出す者はいない。
何故なら、レコード会社の商品であるアーチストが、レコード会社の宣伝をするのは本末転倒だからである。

何故そんな言い方をするのか?、あれは自発的に言ってるのか?、誰かに言わされてるのか?、昔から演歌特有のお決まり文句なのか?、もしかしたら、レコード店に買いに行っても、歌手名や曲名だけじゃCD検索出来ないのか?、単にメジャーレーベルからCDが出てますよと見栄を張りたいだけなのか?、それともレコード会社が廃盤にしないよう圧力をかけているのか?。
無名の演歌歌手が、レコード会社といつも親密な関係で仕事をしているとは思えないのだが・・・TVの仕事はレコード会社が取って来てるのか?。
演歌を扱っているレコード会社は限られているから、何か特別な決まり事でもあるのだろうか?・・・ディープ過ぎてちょっと恐かった。

偉そうなことを言っても、私の知っている音楽業界など所詮ポップミュージックを主体としたジャンルだけである。
クラシック、ジャズ、カントリー、シャンソン、歌謡演歌、民謡、邦楽、等昔からあるトラディショナルなジャンル、マニアックなジャンルに関しては、その世界の実態も、仕事内容についても、人から聞いた噂程度の知識しかない。
アンダーグランドなハコや営業音楽の世界に至っては、その場に足を踏み入れた事さえほとんど無い未知の世界だ。

正直に言うと、私が今こんなことで食えているのも不思議なぐらいだ。

Naoki

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